2026年7月28日、中央最低賃金審議会が今年度の最低賃金の目安を答申しました。
全国加重平均で1,176円。前年から55円、率にして4.9%の引き上げです。55円という上げ幅は、金額でみると過去2番目。この目安をもとに各都道府県で審議され、例年どおりなら10月ごろに発効します。
今回は少し珍しいことも起きていて、大都市(Aランク)の目安が+54円だったのに対し、地方(B・Cランク)は+56円。地方のほうが上げ幅が大きいという答申になりました。
さて。
「うちは従業員がいないから関係ないな」
そう思って読み飛ばそうとした方に、今日はぜひ最後まで読んでいただきたいんです。この数字、ひとりで事業をしている方にこそ効いてきます。
ポイントを整理します
最低賃金は、人を雇っている場合に、その方へ支払う賃金の下限を定めたものです。パートやアルバイトも含みます。
ただし、個人事業主ご本人には適用されません。労働者ではないからです。ひとり社長の役員報酬も同じです。
なので、制度上は「関係ない」で正しい。
人を雇っている方は、10月以降の改定に向けて確認が必要になりますが、そうでなければ手続き上やることはありません。
ここからは、わたしの考えです
ここから先は、わたしがこの数字をどう見ているか、という話です。
わたしはこのニュースを、制度の話としてではなく、
世の中が決めた「人の1時間の下限価格」として見ています。
社会が、「人に1時間働いてもらうなら、最低でもこれだけ払ってください」と決めた金額。それが1,176円になった。
そこで、こう思うわけです。
じゃあ、あなたが自分に払っている時給は、いくらですか?
「自分でやったほうが安い」は、たぶん逆です
ひとりで事業をされている方の多くが、こう考えています。
「外注するとお金がかかるから、自分でやったほうが得」
わたしも、そう思っていた時期がありました。
でもこれ、自分の時間の値段をゼロで計算しているから成り立つ計算なんですよね。
たとえば、こんな作業。
- 請求書を作って送る
- 領収書を整理して入力する
- SNSの画像を作る
- 予約表を手で書き直す
- 使いにくいパソコンの動作を待つ
これを月に20時間やっているとします。1,176円で計算すると、月に約23,500円。
年間で約28万円です。
外に出ていくお金ではないので、通帳には出てきません。
でもこれは、あなたの時間で払っていますよね。
しかもこの28万円は、売上を1円も生んでいません。誰かの困りごとを解決してもいません。
経営者の時給が、最低賃金と同じでいいはずがない
もう一歩踏み込みますね。
1,176円というのは、下限です。目標ではありません。誰かに雇われて働く人に、社会が保証している最低ラインです。
事業のリスクを自分で負って、休みの日も頭の中は仕事のことでいっぱいで、うまくいかなければ収入がゼロになる。
そういう立場の人が自分に払う時給が、雇われている方の下限と同じ、というのは、どう考えても計算が合いません。
だからわたしは、こうお伝えしています。
自分の作業を時給に直してみて、1,176円を下回る仕事があったら、
それはあなたがやる仕事ではありません。
厳しく聞こえるかもしれません。でもこれ、能力の話ではないんです。
配置の話です。
あなたにしかできないことに、あなたの時間を使ってほしい。それだけの話なんですよね。
そして、この線は毎年上がっていきます
もう一つ、忘れずにお伝えしたいことがあります。
最低賃金は、毎年上がっています。今年は4.9%。ということは、「自分でやったほうが安い」の境界線が、毎年上へ動いているということです。
去年は自分でやるのが合理的だった作業が、今年はそうではなくなっている。来年はもっとそうなる。
なのに、多くの方の「作業の分担」は、何年も同じままなんですよね。
事業を始めたころに自分でやると決めたことを、そのまま続けている。あのころは、それでよかったんです。でも、線が動いてしまった。
だから、分担を定期的に見直す必要があります。値段と同じで、一度決めたら終わり、ではないんです。
今日できる、時間の棚卸し
難しい計算はしません。1週間だけ、試してみてください。
やった作業を、3つに分けます。
A. 自分にしかできない仕事 お客様と話す。商品を考える。判断する。ここはあなたの本業です。
B. 誰でもできる仕事 入力、整理、単純な作業、待ち時間。
C. やらなくていい仕事 やっているけれど、やめても誰も困らないもの。意外とあります。
そして、Bの時間に1,176円をかけてみてください。
その金額が、あなたが毎月、見えないところで払っている人件費です。
そのうえで、こう考えます。「この金額で、誰かにお願いできないだろうか」。できるなら、それは節約ではなく、時間を買う投資です。
Cは、単純にやめましょう。これがいちばん早くて、いちばん効きます。
「頼むのが苦手」という方へ
とはいえ、ここでつまずく方がとても多いんです。わたしもそうでした。
人に頼むのが苦手。
説明する時間で自分がやったほうが早い。
頼んで断られたら気まずい。
でも、「助けて」と言えることは、経営判断のひとつなんですよね。
稼げない人ほど、全部自分でやろうとします。
責任感が強くて、まじめな方ほどそうなる。
そして不思議なもので、人は頼られると、その相手に好意を持ちやすいんです。
頼むことで関係が壊れるのではなく、頼むことで関係が深まる。
そういうことのほうが、実際は多いと思っています。
いきなり全部を外に出す必要はありません。まずは月に2時間ぶんだけ。
それでも年間で24時間、まる3日ぶんの時間が戻ってきます。
まとめ
- 2026年度の最低賃金の目安は全国加重平均1,176円。前年比+55円、4.9%の引き上げ(2026年7月28日答申)
- 大都市が+54円、地方が+56円と、地方の上げ幅が上回る答申になった
- 最低賃金は人を雇う場合の下限で、個人事業主本人には適用されない
- ただしこの数字は「人の1時間の下限価格」として使える
- 自分の作業を時給に直して1,176円を下回るなら、それは自分がやる仕事ではない
- そしてこの線は毎年上がる。作業の分担も定期的に見直す
数字が苦手でも大丈夫です。今回使うのは、かけ算ひとつだけなので。
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出典
- 日本経済新聞「最低賃金の全国平均1176円に 26年度目安、55円引き上げ」

- 厚生労働省 中央最低賃金審議会「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」答申(2026年7月28日)
※答申資料そのもののURLは確認できていません。数字(1,176円/+55円/4.9%/Aランク+54円・B/Cランク+56円)は複数の報道で一致したものです。
実際の地域別最低賃金額は、各都道府県の地方最低賃金審議会の審議を経て決定されます。人を雇っている場合の対応は、お住まいの都道府県の最新情報をご確認ください。

